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認知症の方が「家に帰りたい」と言う本当の理由

  • 5月24日
  • 読了時間: 5分
木の机に、家の置物とマグ、花、ペン。手書きの日本語メモ2枚があり、心が落ち着くやさしい雰囲気。


「ここが家ですよ」と言っても、なぜ帰りたくなる?


「もう帰ります。」「母親が待ってるから。」「家の戸締まりしなきゃ。」

介護施設で働いていると、こうした言葉を耳にすることがあります。

でも、その方はすでに施設で暮らして数年。家も、すでに引き払っている場合もあります。

ご家族からすると、

「ここが家だよ。」「さっき説明したじゃない。」

そう思ってしまいますよね。

実は、この「家に帰りたい」という言葉には、深い意味があります。

その理由を知るだけで、介護は少し優しくなります。



「帰りたい」は“場所”ではなく“気持ち”の話


認知症の方が言う「家に帰りたい」は、本当に“自宅”を意味しているとは限りません。多くの場合、

✔︎不安

✔︎寂しさ

✔︎落ち着かなさ

✔︎誰かに会いたい気持ちなどを表していると言われています。

つまり、「安心できる場所に行きたい」という心の表現なのです。

認知症ケアでは、このような行動や言葉を“問題行動”として見るのではなく、その背景にある感情を理解することが大切だと考えられています。



認知症になると、“今”がわかりにくくなることがあります


認知症では、最近の記憶から失われやすい特徴があります。一方で、昔の記憶は比較的残りやすいことがあります。そのため、

✔︎若い頃

✔︎子育てをしていた時代

✔︎実家で暮らしていた頃の感覚で話されることがあります。たとえば90歳の方が、「お母さんが待ってる。」と言うことがあります。

もちろん、実際には何十年も前に亡くなっている場合もあります。ですが、本人の中では“今”の感覚なんです。私たちが見ている世界と、認知症の方が感じている世界は少し違う。そこを理解すると、接し方も変わってきます。



「違いますよ」は、場合によって逆効果になることも


つい言ってしまいがちな言葉があります。

✔︎「違いますよ。」

✔︎「もう家はないですよ。」

✔︎「ここが家ですよ。」

ですが、場合によっては、不安や混乱を強めてしまうことがあります。

なぜなら、本人にとっては“本当”だからです。否定されることで、

不安、混乱、怒りにつながってしまうケースもあります。認知症ケアでは、「正しいことを伝える」よりも、「安心してもらう」ことを優先する考え方があります。



介護士が実際によく行う対応


介護現場では、まず“気持ち”を受け止める対応をすることがあります。

たとえば、「帰りたい。」と言われた時に、「お家が気になるんですね。」「今日は少し不安ですか?」「帰る前にお茶を飲みませんか?」と声をかけることがあります。

すると、安心につながるケースがあります。

認知症ケアでは、“答えを訂正する”より、“気持ちに寄り添う”ことが大切になることが多いです。



実際にあった、ある利用者さんのお話


ある女性利用者さんは、毎日夕方になると、「帰る!息子が待ってる!」と玄関へ向かっていました。

スタッフが止めようとすると、怒ってしまう。そんな日々が続いていました。

でもある日、一人の介護士がこう声をかけました。

「息子さん、優しいんですね。」

すると、その方は急に笑顔になり、「そうなの。昔から優しくてね。」と話し始めたそうです。

そこから30分以上、昔話。

気づけば、その日は「帰りたい」と言わなくなっていました。

後からその介護士はこう話しました。

「帰りたかったんじゃなくて、“気持ちをわかってほしかった”のかもしれませんね。」

介護は、人の人生に寄り添う仕事なのだと感じる瞬間です。



ご家族が今日からできること


① 否定より“共感”

まずは、「帰りたいんだね。」と受け止めるだけでも大丈夫です。

無理に訂正しようとしなくてもいいんです。

② 昔話を聞いてみる

認知症の方は、昔の記憶が安心感につながることがあります。

✔︎子どもの頃

✔︎お仕事の話

✔︎子育て

✔︎学生時代

などを聞くと、穏やかな表情になることがあります。

③ 不安を減らす環境づくり

夕方になると不安が強くなる方もいます。

これは「夕暮れ症候群(サンセット症候群)」と呼ばれることがあります。

✔︎部屋を明るくする

✔︎テレビ音量を調整する

✔︎誰かがそばにいる

こうした小さな工夫が、安心につながる場合があります。



「認知症=何もわからない」ではありません

認知症になっても、

嬉しい、悲しい、恥ずかしい、寂しいという感情は、しっかり残っています。むしろ、感情はとても敏感です。だからこそ、“どう接されたか”は心に残ります。認知症の方にも、その人らしさがあります。


介護は、“その人の人生”に触れる仕事


介護施設は、ただ生活を支える場所ではありません。

その人が歩んできた人生を尊重する場所です。

若い頃に頑張って働いたこと。家族を育てたこと。誰かを大切に想ってきたこと。

認知症になっても、その人生が消えるわけではありません。「家に帰りたい」という言葉の奥にも、その人の人生があります。


明るい室内で、介護士の女性が高齢女性の肩に手を添え、笑顔で語り合う。テーブルに湯のみ、穏やかな雰囲気。


まとめ


認知症の方の「家に帰りたい」は、単なるワガママではありません。

そこには、

✔︎不安

✔︎寂しさ

✔︎安心したい気持ち

が隠れていることがあります。大切なのは、正しい答えを伝えることより、“気持ちを受け止めること”。それだけで、表情が変わる瞬間があります。認知症ケアに「絶対の正解」はありません。

だからこそ私たちは、“その人にとっての安心”を大切にしています。



私たちが大切にしていること


私たちの施設でも、一人ひとりの「その人らしさ」を大切にしています。

介護の悩みは、一人で抱え込まなくて大丈夫です。

「こんなこと相談していいのかな?」

そんな小さなことでも、お気軽にご相談ください。



 
 
 

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